【愛媛】松山市在住の小説家・早見和真さん(43)が、ノンフィクション「あの夏の正解」を刊行した。昨夏、新型コロナウイルスの感染拡大で全国高校野球選手権大会が中止になり、夢舞台の喪失と向き合うことになった高校球児たちに、3カ月間密着。元球児の早見さんが自身の姿も重ねながら、球児たちの本音に迫った。
「俺だったらやめるよなって思ったんですよ」
甲子園の中止が発表された昨年5月。早見さんは、甲子園出場経験のある強豪校、済美(松山市)と星稜(金沢市)の野球部に取材を始めた。
甲子園に続かない高校野球に、やる意味はあるのか。最後の夏に自分で折り合いをつけた、その先の答えを見たいと思った。
この取材の前、早見さんもコロナ禍でスランプに陥っていた。別の連載の仕事を後回しにして、グラウンドに通うこと3カ月。甲子園のない夏に、それぞれ野球の「楽しさ」を見いだす球児たちの姿を見た。
「最初は『早く終わんないかな』とさえ言っていた彼らが変わっていくさまを、誰よりも近くで見させてもらった。いい3カ月だったよなって、これから10年は思い続けそう」
同時に、「何でもいいから文章を書きたい」という自分の原点の気持ちを思いだした取材でもあったという。「何よりも大切なものを失った生徒が、どう生きたかの記録を残せた」
新潮社刊。税込み1540円。(足立菜摘)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル